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Diary-2023.03.17.Fri

いいお店ってなんだろう。



他のお店についてここで書くのはどうかとも思ったけど、blogじゃなくて一応日記という立ち位置なのでそれも良しとして書いちゃいました。






前の会社で退職するギリギリのタイミングだっただろうか。サルバムを世界一販売する店が神戸にあるらしい。お前見に行って来い!と会社に言われ受動的に神戸に向かった。グレーのスラックスにネイビーのジャケット、白シャツにレジメンタルタイというステレオタイプな百貨店マンの格好で汗をかきながら軽く熱されたアスファルトが続く坂を登り歩道橋を渡る。

何人かのお客様がいた。
入店してすぐにデパートにも今まで行った店にも無い空気を感じた。
そして、ビビって40秒で帰った。
情けねぇ。

私が初めてMukta / Salに行った時はこんな感じで終わった。

そしてその後すぐ、私は会社を辞め、自らお店を出すことになった。
固定のお客様もいなけりゃ、地域に密着した個店の服屋の友達もいない。1人でぶつぶつ言いながら、良い店とはなんだろうと考え続け、店を変え続けた。

様々な出会いがあり洋服を作る側の人達との交友関係は少しずつだが広がっていく。
そんな中、ひょんな事からMukta / Salの仕入れ係のイタイくんがお店に来てくれて顔見知りになった。有名人だし元々知っていた。

次の週、イタイくんをお店に連れてきてくれたデザイナーのイベントがあるという事で閉店後に人生2回目のMukta / Salに向かった。

夏なのか秋なのか中途半端な時期だった気がする。陽が落ちてもまだ熱の籠ったアスファルトが続く坂を登る。歩道橋を渡る。汗だくになった私はレオパードのタンクトップのみという中々キッチュな服装?なりでお店についた。

店に入ると、マネージャーのロビンさんが接客をしていた。共通の友達は多いが今まで話をした事は無かった。折角、他の店に来たのだからと聞き耳を立てた。店の技術として盗める物は盗もうと卑しい根性で。

洋服の話では無く、人生相談を受けていた。
その問いに、何になれるか。出来るか。じゃ無くて、どう在りたいか。が1番大事なんじゃ無い?みたいな事を言っていた。

私も洋服以外の話を積極的にお店では行なうし、そうあるべきだと思う。けど、その時のそれは接客のテクニックとかそんなのではない別の物に見えた。少し鳥肌が立っていた。冷房のせいかも知れない。

良い店とはなんだろう。

そして、私は少し小さいかなと思って試着したブルゾンがジャストフィットだったのでそれを購入し、オーナーの宮崎さんとロビンさんとイタイくんと帰りの挨拶をした。

イタイくん以外とは初めての挨拶だった。オーナーの宮崎さんは私の一個上の歳で、共通の知り合いなどは居なかったが年齢やMuktaの存在感から勝手に意識していた。持ち前の人見知りを発揮し、良い感じの話も出来ず熱の冷めたアスファルトの上で汗をかき始めたのでそそくさと駅に向かった。

その後気付けばイタイくんとは、月に一度は確実に飲みに行くようになった。洋服屋の知り合いが少ない私にとって仕事の弱音が吐ける唯一の友達だ。そんな彼から今回、5周年のイベントでフリーマーケットをするので何か出して欲しいと電話があった。

勿論、沢山お世話になっている彼の頼みを断るような事はそんな簡単に出来ない。別にフリマだから個人的な物を出すだけなので気にする事でもない。それに、多分うちのお店の認知が少しでも上がってくれるきっかけになればという彼の気遣いとだと思う。

良い店とはなんだろう。

そう毎日のように考えている。ラーメン食ってる時ですら。とても美味しいラーメンを食べると1000円でこんなに多くの人を幸せに出来るのかと服屋としての悔しさすら汲み上げてくる。そんなご飯屋があればいろんな人にここいいよって勿論伝える。

洋服屋はどうだろうか。

限られたマーケットの中で、限られたブランドを取り合い、限られたお客様の財布を確保する。
なんだかそういう陣取りゲームの上手さで生きているところは多いのでは無いだろうか。

そういう事じゃないような気がする。それだとまさに誰がアパレルを殺すのか状態だ。洋服を好きな人を1人でも多く作って、洋服を好きで居続けていてくれるようにコミュニケーションを取る。良いお店とはどれだけ一人称単数のコミュニケーションを増やし続けてお店のアイデンティティにするかみたいな所なのかも知れない。

確かに、Mukta / Salは一人称単数のコミュケーションが重なり合うことで結果的にコミュニティになっているそんな場所だ。

うちはうちで一人称単数をしっかりやり続けている自信はある。良いお店なのかも知れない。分からない。

良いお店だと思う店があれば仲良くすればいい。勿論、金儲けの仲良しごっことそれは違う。人間としての程度とリスペクトの問題だ。

私にとって良いお店と思える場所が世間で際立てば際立つ程、私にとって都合の良い世の中になるという腹黒い気持ちもあるのかも知れない。私はMukta / Salは良いお店だと思うし、イタイタイコウは良い仕入れ係だと思う。服屋としての服を好きな人を増やし、それで幸せになって貰えるようにやり方を考え続ける。それでいいんじゃ無いだろうか。

今回のMukta / Salのイベントでは服はほとんど出さず、お店を作る上で参考にしてた本、資料、什器用の物など、好きだけど手放さないと頭の垢のようにこびりつき離れなくなってしまう気がしてしまった物を中心に出してます。大した物じゃないけれど、結構私にとっては大事な物です。これを機に断捨離出来て良かった。因みに神戸にはウチの営業があるので行けません。


皆さん、改めて5周年おめでとう御座います。


VODKA connecting people 
チカザワ



 


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Jun Chikazawa / 近澤 惇

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