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A MACHINE – designer interview

A MACHINE
“Love and against is the future and the past.” (2021)

Order Exhibition in VODKA connecting people
2021.04.02 -04.05 13:00-20:00

A MACHINEは2016年に多摩美術大学を卒業し、東京をベースに活動する金井慶介によるファッションブランド。
“You are not a machine but like a machine” – あなたは機械ではないが、機械のようだ –
をテーマに、毎シーズン1つの役割に焦点を当て人間らしさの美しさ、皮肉さを追求している。

今回の “Love and against is the future and the past.”(2021) を見させて頂いた後に、お取り組みについて何度もお話をさせて頂きました。まずは様々な人にブランドのことを良く知って貰うことから始めたいと考えが一致し、4/2-4/5の4日間、当店で特別にオーダーエキシビジョンを開催することに。露出を嫌ってきたのか情報量のとても少ない。従来のファッションブランドの枠に収まらず、建築事務所 DAKEI MILLS  との共作のインテリアや、アーティストBIENとのコラボレーションなど、多種多様な活動を行っており、独自のクリエーションと強い意志を持ったデザイナーです。
 A MACHINE について、また、デザイナーである金井氏について、まず様々な人に知ってもらいたいと言うことで事前にインタビューを行うことにしました。2回に分けてインタビューを行っています。記事も前編後編で分けますが少し長くなってしまいました。最後まで読んで頂けますと幸いです。

Q1. まず、簡単に自己紹介からお願いします。

ファッションブランド A MACHINEの金井慶介と申します。

“You are not a machine but like a machine.” 人間らしさ、皮肉さをテーマにオブジェクトを制作し、それをリファレンスとし洋服を制作しています。

Q2. 言葉では表しにくいのですが、通常のファッションブランドとは、少し違う印象を持ちます。多くの人に言われると思うのですが、これは何故だと思いますか。

おそらく空間やオブジェクトを制作しそれを洋服に落とし込んで制作しているからだと思います。こういったやり方にはいくつか理由があって、僕は洋服自体はあくまでプロダクトで長く使ってもらいたいと考えています。

 若い頃に買って着なくなるような突飛な洋服をあまり作りたくない。けど、自身のアティチュードを伝えていきたい。であれば、空間やオブェクトというソースと洋服を対にすることで伝わるのではないかと考えています。また、リサーチとアウトプットの間に1つオブジェクトがあることで自分の想像し得ないエッセンスが入ってくるのが主な理由です。

Q3. 今シーズンのテーマは、”Love and against is the future and the past.”(2021)
 直訳すると、「愛する事抗う事は未来と過去である。」物を見ていても、金井さんのルーツに繋がるモチーフが多いなと感じました。どうしてこのテーマを選んだのでしょうか。

- 今まで、アーティストの在り方や業界の未来に対し反抗することが僕の存在意義だと信じ制作をしていました。昨年に行う予定であった前回の展示会をコロナウイルス感染拡大防止のためやむを得ず中止しました。その時、ブランドのあり方や自分自身の過去を振り返り、純粋な初期衝動や洋服への愛情を忘れていたように感じました。しかしながらどちらも大切で必要なことであり、初期衝動の愛情と未来への反抗こそが自分自身だと感じ、ブランドを見直し、A MACHINEの分岐点としてそういったテーマにしました。

 具体的には今回から洋服にエディションをつけ、SS/AWをなくしたり、インスタレーションからオブジェクトという名称に変えました。ステートメント等は長いので下に書いておくので少し興味のある方は読んでみてください

Q4. A MACHINE をこんな人に着て貰いたいという人物像はありますか。

具体的にはいません。自分より年上の目の肥えた人に着てもらえたら嬉しいです。着て貰いたくない人はたくさんいます笑

Q5. 個人的なインスタグラムでも繋がらせて貰ってますが、ビートたけしの事が好きなイメージです。それが活動に何か影響を受けていることはありますか。

映画、人自体にも人間の滑稽さの美しさ、皮肉さの優しさをとても感じます。僕はこういう人間らしさに魅力を感じるのかと理解する一つのきっかけになりました。

Q6. 最後に、恥ずかしくて、他のブランドさんには聞けなかったりするのですが、何故、私のお店を選んでくれたのですか。

近澤さんとVODKA connecting people さん自体が連動していて、いい意味で飾らず洋服や興味のある分野に実直だと感じたからです。A MACHINEは色物に見られたりすることもありますが、僕は真っ当にファッションだと思って活動しています。今季からバイヤーさんにお声がけをさせて頂いたんですが、僕のようなブランドだからこそ”洋服”に愛情のあるお店といい関係をつくり、新しい時代を築きたいと思っています。


A MACHINE
“Love and against is the future and the past.” (2021)

– Statement –
 研究や祈りは形骸化した意志の言い訳であり、新しいものを作り続けることが進化で大きな流れへの反発となり、それが自分の役目と信じていた。洋服を初めて作った時のことをふと思い出した。過程の泥臭さや複雑さ、愛情に美しさを感じた。何にしてもモノを作るとき、その過程に明瞭な意思や祈りを込める。深い愛情と葛藤が過去と未来で現在のあるべき自分だ。

-Back ground –
僕は旅館や叔父の家で動物の剥製を見るたびに、何となく不気味で趣味が悪いと感じていた。ある日、剥製職人の長谷川芳隆さんの「なぜ人間の剥製を作らないのか」というインタビュー記事を拝見した事をきっかけに、長谷川さんの著書をいくつか読みました。そこには1つの命との向き合い方、 命の価値に葛藤しながらもささやかな生活が描かれ、出来栄えの鍵を握るのは手の技、知の技、愛情と前置きがあり、剥製を作る簡単な手引きが文章に書かれていた。しかし、実際に剥製を作る資料をみるととても生々しく、気が遠くなるほどの工程が書かれていました。そこに長谷川さんの深い愛情と葛藤を強く感じ、一見、自分と結びつくことのないような剥製師という職業に何か強い共感を覚え、また、それと同時に自分自身の初心を忘れた姿勢に気付かされ、とても恥ずかしく感じました。

より強い表現を持って自分がいる業界や社会に対し葛藤しているうちに、いつも近くにあった洋服は作品から商品になっていました。植物を煮出し染めた糸を織った時、長工程を経た布にハサミを入れた時、まばらに染まった布や、糸が飛んだ織り、縫製の雑なシャツはとても美しく感じました。


 アーティストとして研究や祈りなど強い意志があり、続ける反復行為。しかし、反復行為を続けることは若い時に訪れる自分のアイデンティティを無理やり見つけるようなそれと同じように感じ、形骸化した意志が文字として残っているだけで、それは職業としてのアーティストであるかのように、金や見栄のため、少なくとも自己探求とはかけ離れたモノ感じることもあります。

 新しい工程、過程を行うこと、内在する意識の探求、苦難な道こそ進化であり、それのみが自分が表現者としての証と感じていました。そういった反抗や怒りに近い葛藤に飲まれていき僕はいつの間にか、その目に見えない力を宿す器として洋服を見てしまっていました。

 コロナウイルス感染拡大防止のため行えなかった展示会で、インスタレーションやラックに連続してかけることのできなかった洋服は単体で見るととても頼りなく感じました。表現が強ければ強いほど僕の洋服は強くなっていくと過信してルーティーンの中で簡単に作れる洋服や大量生産については自分は許されるとどこかで感じていました。

 大学時代に一番衝撃を受けた作品は入学して2日目で出会いました。同級生の山口は高校生の頃に独学で洋服を作り初め、大学入学の頃にはすでに大学の中で誰よりも丁寧な縫製と技術でジャケットが縫えるほどでした。布を買うお金がなく、家のいらないタオルを縫い合わせて作ったというジャケットは涙が出るほど強烈でした。

 突飛な形でもなく全て真っ白で遠目で見るとただの白いジャケットだが近くで見ても丁寧な仕上げだったが何処か生きているような迫力のある洋服でした。

A MACHINE デザイナー 金井 慶介