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INVISIBLE IN THE DISTANCE.

ENSOU.






 

   ensou.の一番最初のEXHIBITIONは10枚の白いシャツのコレクションだった。4月中ば、天気は良いけど少し肌寒い日だったと記憶している。中目黒の少し怪しい感じのビル。本当にここであっているのか?と何度かインヴィテーションを確認し階段を登る。四階だったろうか。指定された階についたが展示会場というより、ライブハウスの楽屋裏のような場所に思えた。

   受付のような物があった気がするが誰もいないかったと思う。少し混乱しているうちに尿意を催した。幸い、便所だけは非常に分かりやすい位置に在ってくれた。少し広めの廊下が続いていたので取り敢えず先に進んだ。悩んだり、用を足したりしている間に約束の13時から5分が過ぎてしまっていた。急足に向かう。廊下の先に少し大きめの扉があった。多分此処だろうと恐る恐る扉を開く。

  薄暗い部屋の中で10枚の白いシャツが青白いスポットライトに照らされている。暗くて冷たい空間、それなのになんだか優しい匂いがした。ハンガーラックは無く、ホームセンターで売っているような棒状の木材を箱状に組んだ格子の下にワイヤーと細いハンガーで吊るしてある。

   西川さんと初めましての挨拶を済ませ、一通り商品を眺める。固定せずにワイヤーから吊るされたシャツは窓から入る風に吹かれゆっくりと回転する。光がステッチに反射した。近くで見るとそのシャツはシルバーのステッチで縫われていることが分かった。小々波に反射する太陽光のようで綺麗だと思った。近くでみないと良さが分からない洋服を作りたかった。そのようなことを言っていた。シャツとは言ってもジャケットの形をしていたり、胸当てがついたり、アトリエコートのような物で在ったり、それぞれの個性を持っていた。その中の一枚を手に取りサッと羽織る。ポプリのような匂いがした。シャリシャリとした肌触り。白シャツはやっぱり良いもんだ。


    全部欲しいくらいに気に入った。心を掴まれたが、開業直後の僕には私物に沢山のお金を費やす余裕は無かった。ゆっくりとシャツを試着した後に、一枚だけシャツをオーダーした。





   それから数ヶ月、エンソウ社から荷物が届く。やけに大きな段ボール箱だった。その箱を開けると更に中には白い箱が入っていた。その中には丁寧に薄紙に包まれたシャツが入っていた。シルバーのステッチで丁寧に縫われたその白いシャツを羽織った。ポプリのような優しい匂いがした。

 


VODKA connecting people / 大阪府大阪市西区江戸堀1-18-5
Jun Chikazawa / 近澤 惇

Brands.
AUBETT / ENSOU. / EESETT&Co.
ISSUETHINGS / MASU / SEEALL / SOWBOW
GABRIELA COLL GARMENT / RAINMAKER KYOTO 
A MACHINE / Call / RANDY / Scha Hat  
and used clothing