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Call Hot-pants Trousers

Call
Hot-pants trousers


“ ギャルの発明品 ”


ギャルのホットパンツというのは、一体、何処の誰が発明したのだろう。本来見えてはいけない物が見えていたり。それは若い男子を熱狂させ、ご両親や先生を発狂させてしまうギャルの美学の化身なのかも知れない。

それ以外にも、セーラー服にくるぶしソックスを合わせるとか。一般的に良しとされるプロポーションから考えれば、明らかにアンバランスであるにも関わらず、その地域、その時代に生きる人間の中ではファッションとして確かにそこに存在する。ギャルの脱構築。

高校生当時の地元では制服のスカートの中にジャージを履くというファッションが流行っていた。体育会の部活に入っていない人間がそうしているのを見ると先生には滑稽に思えるかも知れないけどとても勢いがあるし、意味が分からないし、それがファッションのいい部分だと思う。みんなプーマのジャージなのに、何故かアンブロ履いてる人とかもしかして人と少し違いを付けたいのかなぁなんて。そして、彼氏か兄がサッカー部というオチが待っている。

そんな感じで晩酌中にホットパンツに思いを馳せながらアイフォンのメモにダイアリーのネタをため込む。次の日の朝は恒例のDIY。うちのお店は解体で出た廃材やその辺で拾ってきた壊れた椅子、ホームセンターでウロチョロしていいなと思った良くわからない質感の建材などを使用し改装を日々行っている。友人には万年プレオープンなんて揶揄もされてしまう。その過程で作って壊して、偶然出来た変なエラーを活かして、少しづつお店を変化させている。着地が見えない状態でやってしまうのでいつも手を動かしながら思いつきで行動している。だから全然終わらない。


 哲学者のレヴィ=ストロースは、社会学教授として赴任した調査でアマゾン川流域の先住民族と出会った。そこには、想像もしなかった豊かな世界が存在した。彼らは、先進国には無い植物に対する非常に高度な理解やルールを持っていた。友人のヤコブソンに言語学を学ぶ中で、あらゆる現象を言語学的構造から解明する「構造主義」という方法を手にした彼は、先住民たちの習俗や儀礼、神話の数々が決して野蛮で未熟なものではなく、極めて精緻で論理的な思考に基づいていることを発見し、彼はそれを「野生の思考」と呼んだ。神話的・呪術的な性格を持つこの思考様式は、近代科学とは区別されるもうひとつの科学として「具体の科学」と呼称され、レヴィ=ストロースはその形態を「ブリコラージュ」になぞらえて説明している。

レヴィ=ストロース 『野生の思考』

「ブリコラージュ(bricolage)」とは「ありあわせの道具材料を用いて自分の手でものを作る」ことを意味する。ギャルがホットパンツを発明したのも、女子高生がスカートの中にジャージを履くのもそれに当てはまるのではないだろうか。僕のDIYも出来れば混ぜてほしい。

今回紹介するトラウザースは、2000年代に見られたギャルのジーンズの下からポッケが出てしまっているホットパンツのディティールをトラウザースの上にドンと乗っけている。ドッキングされているが、二つの要素を合わせて調和するのでは無く、取ってつけたような形のまま残しているように見える。

SUPER140 の“いい生地”を使っています。気持ちいい。

腰帯(ウェスマン)が無く一枚の生地で腰まで作り上げられている。またはみ出ているポケットは中に格納することが出来ます。
SEEALLのワークシャツジャケットと合わせてみた。短丈の物と合わせればいい感じの違和感が残る。
ISSUETHING type19 deepnavy ジャケットの下からチラ見えするくらいで意外と気づかれなさそう。
15分後に気付く違和感も悪くない気がします。
AUBETT のオーバーサイズシャツと。服分かんないですけど、この生地が凄くいいことはわかりますって言ってました。普通に似合ってました。

モダンでもレガシーでも無い何かを作りたかったと石川さんは展示会で話してくれた。着る人自身が自由に着るために敢えてそのような形にしているのかも知れない。つまり、答えがはっきり見えてしまうような物を作るのでは無く、着る人がDIY精神をもって洋服を感覚的に楽しんでもらえるよう、普通なのか変なのか良く分からない曖昧な仕上がりにしているのだと思う。確かに、このトラウザースは、こういうタイプの人が着てるよね、みたいな部分があまり想像出来ない。何処かの誰かが自分の文脈で好きに着てくれるのを待っているような存在に見える。

因みに最大サイズでも僕の身体では入らない。残念ながら、その”何処かの誰か”には成り得ないようです。曖昧で、よく分からないけどなんかかっこいい。自由に着てくれる人が多分そのうち買ってくれる。

最近被写体として手伝って貰っていた矢野君は東京に行ってしまった。矢野君頑張れ~。ので、今回は着用者として最近埼玉から来たナオヒロにお願いした。ナオヒロ君はうちのバイトでも無いし、うちで服を買った事は一度も無い。基本的に全て貰い物の服とリサイクルショップで買った良く分からない変な色の服を着ている。うちのお店には靴があまりないので、彼が履いていたよく分からないアディダスのスケシューやクタクタになったTシャツと一緒に着てもらった。それでもこのトラウザースはちゃんとそこで自然な違和感を作ってくれていた。


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Jun Chikazawa / 近澤 惇

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