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Diary 2024.02.05.AMACHINE

A MACHINE

“You are not a machine but like a machine”
– あなたは機械ではないが、機械のようだ – 

A MACHINEの洋服に時折り見られる、洋服のいくつかの機能性や象徴を台無しにしてしまうデザインプロセス。分かりにくい部分でもありながら、言語で説明せずとも洋服を構成する全体のムードで相反する何かが混在していることを表現出来ている所にファッション性を感じます。今までも、 そして今シーズンもまた、複雑なプロセスの中で分かりやすくファッション表現を行なっている。

選択出来ない柄というルールのもと、英文の歌詞に合わせてリップストップのブルゾンをレーザーで切り刻む。Rip(裂ける)Stop(止める)という名の通り、強靭な組織を持つテキスタイルの特徴や風防の機能性をレーザーによるカッティングによって失わせながらも、風が通ることで春夏に着る事が出来るというフィジカルに理解が出来る問題解決を行なっていることがとても面白く、愛嬌のある皮肉も感じさせます。この洋服で注目したいのはベンチレーション。これだけメチャクチャに隙間を作っているのにも関わらずベンチレーションが存在します。なぜだろう。それを付けたところでそれは洋服になった途端に無用の長物となってしまうのに。むしろベンチレーションがなければ、切り刻むことでリップストップの機能性を失いながら春でも着られるウェアにリデザインした痕跡が残らない。そのため残しているのでは無いでしょうか。着てたら見えないし、とても分かりにくい部分ですが、これがあるのか無いのかで理屈としても合わなくなり、そうすると見た目も必然的に軽い物へとなってしまう気がします。

明らかに必要で無い物がそこにあるという事は、明らかにそこに必要である理由がどこかに隠されているんじゃ無いでしょうか。古着の変なディテールに何か思いを馳せたり愛情を持ってしまうことにある種似た部分があるのかも知れません。ニードルパンチを当てた地の目が出鱈目のシャツについても書きたいですが説明が非常に難しく長くなりますので、それはまた別の機会にDiaryで示そうと思います。

前のシーズンのジャケットです
張り切り過ぎてまだ在庫が沢山ある。細かい説明は以前から何度もしているので省きますが、このジャケットも同様に不必要にも感じられる工程を踏む中で彼らの -らしさ- の解像度がぐっと深いところまで落ちているように思えます。芯地もベントも廃したうえで、中綿と洗いで大きくそして立体的にしたテーラードのジャケット。その副資材として使用している袖口は身頃の大小のボタンはパッと見ではプラスチックですが妙な迫力と違和感があります。これは高級ボタンとして代表的な素材である水牛のボタンに強くブリーチを掛けることで、歪な形へ変え、自然由来の豊かで複雑な色の組み合わせを透明で薄く見えるチープな石油系のボタンのように仕上げています。あえてチープな素材で仕上げるというバランスの取り方とは違い、チープになるよう工程を踏み直し台無しにするという非常に無駄な部分にファッションとしての価値があるように感じます。神は細部に宿らない。

当店で最初に販売したフーディ
大量の玉ねぎの皮で一点一点煮詰め、バイオマスボイラーから生まれる強酸の産業廃棄物を色止め剤として使用してます。強烈な液体のため生地の表面は焼けを起こし、ステッチは綻びます。色止めに適した物では無いため玉ねぎの色素は洗濯の度に大きく色落ちし最後は古く日焼けした石膏ボードの用な佇まいへと変化します。草木染めという自然派な染め方に対して、反するようにREAL MADな仕上げを行ない、衣類として一般的に求められる物から少し離れた所へと突き上げる。ここでもまたプロセスですら台無しにしてしまう。らしさを感じさせます。

人工的という言葉の響きは、自然と相反する物として考えられると思いますが、人の手による仕事といえば途端に自然な物だとイメージが湧いてしまいます。当初から“ You are not a machine but like a machine ” – あなたは機械ではないが、機械のようだ – というテーマを掲げ人間が持つ美しさや皮肉さを表現し続けきた A MACHINEのファッション性にはそのような相反する物が混在しています。それがムードとして愛嬌を以って表面化している部分にテイストとしての興味、人としての欲求がくすぐられます。

その可愛らしくて棘のある衣類としてのテイストだけでなく、内容にこそ、そのらしさが潜んでいる。そこに少しでも気づいていければより一層楽しんで貰えるかも知れない。
どれだけ皮肉っぽいプロセスを踏もうとも、彼の豊かな人間性が愛嬌を与えます。

結局の所、たった1人のお客様が頼んでくれていた商品が留学に行くまでに間に合うのかと心配している所に人間らしい部分の全てが現れているようにも思えます。無事、出国2日前にお渡し出来てほんと良かった。向こうでも愛用して下さい。

ウォッカコネクティングピープル
近澤